茹でる。
それがベーグルの特徴です。
迫害を受け、パン作りを禁止されたユダヤ人が考え出した製法だった、との話を聞いたことがあります。
ベーグルについてのお話と、最近作っているベーグルのレシピです。
ベーグルはパンじゃない!?
起源
ベーグルは、ポーランドに住むユダヤ人が作ったと、言われています。
中世ヨーロッパ時代、ユダヤ人はパンを作ることを禁じられます。
キリスト教徒にとって、パンはキリストの体、聖体として重要な意味を持つ食べ物です。
反対派と見られていたユダヤ教徒の、パン作りを禁じたのです。
そこで、「茹でる」という工程を加えた・・ベーグルを作って食べた・・という話です。
ベーグルの元祖と言われているパンがあります。
ポーランドのクラクフまたはその近郊で作られるパン、「オブヴァジャネック」です。
(Photo:Muzeum obwarzanka)
「オブヴァジャネック」は、EUの原産地名称保護制度に認定されているパンらしく、この地方の手作りのパンだけしか、この呼び名を使うことが許されず、そこに行かないとお目にかかれないパンなのです。
プレッツェルの様にも見えますが、ベーグル同様リング型で(ねじって成型する)、茹でる工程があるパンです。
1394年の文献にこのパンの記述があるらしく、まさにベーグルの元祖だと思われます。
その後のベーグルは、ヨーロッパ系ユダヤ人が北アメリカの東海岸に大移動した1900年代に、ユダヤ人経営のパン屋さんで、アメリカでも焼かれるようになりました。
当初はあまり表に出ることはなかったものの、ヘルシー志向の高まりや、取り扱いが他のパンに比べ簡単なこと(冷凍保存後も劣化が少なく食べられる)などから、ニューヨークで人気が出ると、ベーグルは大勢の人に認知されるようになりました。
これが、ニューヨーク生まれと思われがちな所以です。
参考:なぜベーグルは穴を開ける?実用的な理由と歴史的な意味を解説!(こちらの記事が面白かったです)
ベーグルの特徴
ベーグルの一番の特徴、「茹でる」というのは、パンにどのような影響を与えるのでしょう。
小麦粉の中にあるデンプンと水に熱が加わると、糊化(こか:アルファ化)します。
これが、噛みごたえのあるパンの外側を形成する一方、内側は、水分の蒸発が少なく目の細かいもちっとした食感となります。
(パンのきめが細かくなります)
もう一つの特徴は、卵や油を使わず、シンプルな材料で作られるということです。
これは、他のパンに比べカロリーが低くなる、要素の一つであります。
そして、血糖値の上昇スピードをはかるGI値については、食パン・フランスパンよりも低いそうです。
あとはなんといっても、噛みごたえのある食感です。
満腹中枢を刺激し、食べ過ぎを防止します。
こんなことが、ベーグルはダイエット向きと言われているところでしょうか。
また、シンプルな素材ゆえに、サンドイッチにすることで、食べ方のバリエーションが豊富になることも、人気要因だと思われます。
プレーンベーグルの作り方 70g 7個分
前置きがずいぶん長くなってしまいましたが、私が最近作っているベーグルの作り方です。
材料
- 強力粉 250g (83%)
- 薄力粉 50g (17%)
- 塩 6g (2%)
- 砂糖 9g (3%)
- インスタントドライイースト 3g (1%)
- 水 180g (60%)
<茹で用>
- 水 1.5L
- 蜂蜜 大さじ2 ←重要です
(ない場合は砂糖、またはモルトエキス)
失敗から学ぶ ベーグルに焼き色が付かなかった理由ベーグルが、白っぽくなってしまいました。 途中の「茹でる」工程で、レシピに書かれていた「モルトエキス」を入れなかったんです。 実は、モルトエキスの糖(麦芽)はパンに焼き色をつける重要な役割があったんです。 焼き色だけでなく、糖にはパンに様々...
作り方
- こね
全ての材料を合わせ、しっかり混ぜ、コネ合わせる
他のパン生地より少し硬い生地なので、伸びの良い生地では無いが、生地を引っ張った時にやや薄く延びるようになるまでこねる(10分以上) - 一次発酵
28°C 〜 30°Cで30分
発酵の様子はそれほど気にする必要はなく、時間で次の工程へ移ります - 成型
生地を70gで分割
(一般的なベーグルは100g近くで分割しますが、食べやすいので小ぶりに成型しています)
綿棒で長方形に伸ばした生地を、上下で折り畳み、棒状にする
片側を綿棒で薄く伸ばし広げ、反対側の端と合わせ、閉じめを馴染ませ、ドーナツ状にする
(ベンチタイムをとらず、分割から成型まで一気に作業してしまいます) - 二次発酵
28°C 〜 30°Cで30分
(20分経過したところでオーブンの余熱を開始しておく)
(違いが分かりづらいですが、上段:発酵前 下段:発酵後) - 茹で (オーブンの余熱終了直前に)
鍋に、ベーグルが浸かる量のお湯を沸かし、蜂蜜を加える
火加減は小さな泡が鍋底から出るくらいにする(ボコボコ沸騰させない)
片面40秒ずつ茹でる(表→裏の順)
(茹でることにより生地は少し膨らみます) - 焼成
茹で上がったベーグルを鉄板にのせ、余熱の終了したオーブンへ投入
200°Cで7分、180°Cで8分加熱(ご家庭のオーブンによって調節します)
茹でてからすぐにオーブンへ。
放置すると、ベーグルにシワが出来る原因となります。
食べ方
横から半分にスライスし、トースターで焼きます。
(タイミングは一度しかありませんが、オーブンから出したてがやっぱり一番おいしいです)
王道のクリームチーズにスモークサーモンを合わせるのも良いですし、シンプルに蜂蜜とバターでも美味しいです。
家にいつもあるもので。
レタスたっぷりで卵サンド。
あとは、カットした上と下を違う味にして食べるのも好きです。
一つにはクリームチーズを、もう一つにはチョコペーストを。
パンの作り手から見る、ベーグルのいいところがありました。
それは、短時間で作れる、ということ。
ベーグルは、普通のバンと違って、発酵時間をあまり取りません。
よくふくらんだ柔らかい食感を求めるパンでは無いので、ベンチタイムも取らず、発酵時間も短いのです。
そのため、気軽に作りやすいパンでもあるかなと思ってます。
ベーグルに興味のある方は、一度トライを。