シンガポールで見かけた、謎の木。
正体はホウガンノキ(砲丸の木)。
どういう木なのか、調べたところ、何故か平家物語にたどり着きました・・
謎の木を見かけました
時々利用するバス停の近くで見るんです。
ちょうど目線の位置に、ボウリングの球のような実がゾロリとついた木を。
花のつき方もちょっと独特です。
形は椿に似ている気もしますが、咲いている場所は、蛇のようにうねった枝。
地面に落ちた実は、誰にも拾い上げられず打ち捨てられている感じがするので、食べたりはできないのでしょう・・・。
砲丸の木
ネットで調べてみたところ、
ということがわかりました。
初めて聞きましたが、実物を見ると納得です。
花は、総状花序(そうじょうかじょ)と呼ばれる、長く伸びた花の軸にいくつもの小花が等間隔でつく咲き方をします。
大きさは約12cm、6枚で構成される花びらは肉厚で朱色、香りもあります。
中央には密集した雄しべが。
雄しべの形は、食虫植物にも似ているような・・・大きな花だけに、よく見えます。
残念なことに、この花は1日の開花で散ってしまいます。
花の命は短いですが、実の方は、1年半で成長し、1年以上木になっています。
その後、ドサッと落下。
形はまん丸で、最大25cmの大きさにまで成長し、色は茶色。まさに、大砲の弾のような形です。
原産地では、この殻は食器に加工し、利用されているようです。
シンガポールで見れる場所
「ホウガンノキ」は、シンガポールの一部の場所で街路樹として植えられており、以下の場所で見れるようです。(ボタニックガーデンにもあります)
- ネイピアロード Napier Road
- タングリンロード Tanglin Road(私が見たのはこちらです)
- コンノートドライブ Connaught Drive
- シンガポール国立大学のケントリッジキャンパス沿い
参考:https://www.nparks.gov.sg/gardens-parks-and-nature/heritage-trees/ht-2014-230
沙羅双樹と呼ばれている地域も
「ホウガンノキ」を調べていると、「沙羅双樹」と書いている記事をいくつか見かけました。
実は、東南アジアの一部の国(ベトナムやタイ、スリランカなど)では、「ホウガンノキ」を「沙羅双樹」(サラノキ Sal tree)と認識しているケースが多いそう。
お釈迦様が亡くなった所にあった樹木として知られているので、タイなどでは、お寺の境内に植えられていることが多いとか。
そうなったのも、インドからスリランカに仏教が伝わった時、「ホウガンノキ」を「サラノキ」と誤認したことに起因しているらしいです。
本物の「沙羅双樹」はフタバガキ科(二葉柿/双羽柿)の植物です。

(沙羅双樹の花 Photo:Guide to buddhism A to Z)
そんなことで、ホウガンの花は、
- シンガポールのヒンズー教徒 → 礼拝に使う
- スリランカ → 仏教の神社や寺院の供物に使う
- インド → シヴァ神に捧げる
など、聖なる場面で登場します。
日本の「沙羅双樹」は?
「沙羅双樹」といえば、平家物語の一節です。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。
祇園精舎の鐘の音は、「諸行無常」、つまりこの世のすべては絶えず変化していくものだという響きが含まれている。沙羅双樹の花の色は、どんなに勢い盛んな者も必ず衰えるという道理を示している。世に栄えて得意になっている者がいても、その栄華は長く続くものではなく、まるで覚めやすい春の夜の夢のようだ。
ここで言う、花の色はと言うと「白」だそう。
「ホウガンノキ」も「サラノキ」も日本の気候では育ちません。
しかも、花の色は白じゃないし・・・
どういうことかと思ったら、日本ではサラノキの別名を持つ、「ナツツバキ」(夏椿)を指しているのでした。
「ナツツバキ」の白い花は、朝咲いた花が夜にはポトリと地面に落ちるのです。
白い花で地面が覆われた様子はまさに、諸行無常。(ホウガンの花も同じではありますね)
結局、今回の調べでわかったことは、こうです。
- 東南アジアの一部の国では、「ホウガンノキ」を「サラノキ」(沙羅双樹)と呼んでいる
- 日本では、「ナツツバキ」を「サラノキ」と呼んでいる

調べ物の目的がずれてきているので、この辺で終わりにします。