
NEAから来ました。家の中をチェックさせてください。
シンガポールの環境庁が行っている「蚊」対策の抜き打ちチェックです。
胸に下げた身分証と「蚊」のパンフレットを見せられたら、知らない人ですが、家に入ってもらうのが正解の様です。
家庭で蚊を増やさないために重要なのは、少しの水たまりでも放置しないこと!
鉢植えの下に引いている皿はもちろんのこと、食器の水切りカゴ、メインじゃないバスルーム、メイドさんのトイレもです。
デリバリーの予定もないのに訪問客が
「ビーーー」
家の呼び鈴です。
一応、オートロックなので、マンションの入り口でピンポンされれば、誰か確認できるのですが、家のドア前まで直接来てしまった訪問者です。

デリバリーも予定していないし、何かしら?
恐る恐るドアを開けると、男性がニコニコしながら胸にぶら下げた身分証を見せてきます。
さらに、ペンライトに、特大の「蚊」が載っているパンフレットを差し出してきます。

害虫駆除の訪問販売?
どうやら、シンガポール政府の職員の様で、家の中を見せろと言っています。
いろいろわからない上に、身分証も目が見えなくて読み取れません。
ここは、やむなし。
悪い人ではないでしょうと判断し、家に入ってもらいました。
(拡大注意!)
NEAの職員さん
この人の良さそうな男性は、国家環境庁(NEA:National Environment Agency)の職員さんでした。
Mosquito Baby(蚊の赤ちゃん、要するにボウフラ!)がいないか家の中をチェックするそうです。NEAが何をやっているところか分かりませんが、一緒に家の中を見て回ります。
これらの場所に蚊が発生していないか、ボウフラや卵がないかなど、ペンライトで照らし入念に確認です。
ベランダ:雨水の排水
キッチン:食器水切りかご
ベッドルーム:メイン以外のバスルーム
メイドルーム:トイレ、バケツ
メイドルームのトイレはほとんど開けたことがなかったのですが、トイレや排水溝に水が溜まることが蚊の発生の元になるとのこと、使わずとも、1日1回水を流すのがいいそうです。
検査は、「オールクリーン」、「ベリークリーン」で無事合格。
蚊が媒介する病気
蚊を媒介する病気で最もよく知られているのが、
この二つです。
どちらも、ウィルスを持った人の血を吸った蚊が他の人を刺すことで、感染します。
日本でも数年前に「デング熱」が大きく報道され、イベントが有った公園の消毒作業を行いました。
デング熱の症状は、
・頭痛
・吐気
・筋肉や関節痛(とても痛いらしいです)
・発疹(熱が引いた後)
で、死に至る確率はインフルエンザに比べると低いらしいのですが、ウィルスに感染しない為には、蚊を発生させない様にするしかないわけです。
シンガポールでは、今年、デング熱の発生件数がかなり増加しました。
(Source:NEA 赤のライン=今年のデング熱発生件数)
シンガポールのデング熱対策
「蚊」の大量発生から免れられない気候のシンガポール、「蚊」に対する政策も徹底しています。
NEA(国家環境庁)は2002年に設立された、「シンガポールをクリーンでグリーンな環境」にすることをミッションに活動しています。その一つが、害虫などについての管理です。
情報発信
NEAはデング熱やジカ熱の毎日の発生件数や、クラスターの発生状況などを開示しています。
件数 毎日の発生件数、週の集計人数などを取りまとめ
(Source:NEA)
クラスター 発生場所を地図で表示
(Source:NEA)
赤:10件以上発生エリア
黄:9件以下の発生エリア
さらに、蚊の発生現場とされている建築現場も厳しく取り締まっており、蚊を発生させた現場に対しては、作業停止命令を出します。その、作業停止命令が出されている建築現場のリストなども、公開しています。
国民の義務
各施設の責任者は毎週、決められた場所で蚊が発生していないか確認する様、指導されています。ゴミ箱に排水溝、池や噴水、エアコントレー、屋上、ポンプ室、貯水タンク・・。
また、Fogging(殺虫剤の散布:噴霧された薬が霧の様に見える為)についても定められています。
薬剤散布前のNEAへの事前の報告や付近の住民に対する告知、また、作業者は農薬を取り扱える資格保有者でなければならず、その散布剤はWHO(世界保健機関)で認められたもので、薄い濃度で使うとなっています。
蚊を繁殖させてしまった時の罰則
蚊が繁殖してしまった施設の管理者に対しては、最高で5,000 SGD(80円換算で40万円)の罰金、または懲役3ヶ月以内、またはその両方が課せられます。
週次での確認が定められているのは、蚊の成長サイクルからではと思われます。
卵 → (2−3日後)ボウフラ → (4−5日後)さなぎ → (1−2日後)蚊
1週間で卵から成虫になるのですね。
NEAはこれ以外にも、ホーカーセンターの管理なども担当しています。
こちらも、管理しているホーカーセンターのチェックに入った日付など、全て私たちが確認できる様になっています。
屋台の衛生基準の話が出てきたのは→こちら
家庭での注意は
各家庭に対しては、抜き打ち検査です。
家では、蚊を発生させない様に、これらの対応を常に心がけておく必要があるそうです。
- カップや瓶などのゴミには水分を残さない
- 花瓶の水は2日に1回は交換
- 鉢植えの底に置く皿は使わない
- エアコンの室外機のトレーに水を溜めない
- 食器の水切りカゴに水を溜めない
- 家を開ける場合はできるだけ水分を溜めたままにせず、排水口などは口を塞いでおく
- 使っていないバスルームの水は1日1回流す
それにしても、日本と比較して、コロナの対応が素早くて徹底していると思ったのですが、これまでの下地があったからなのですね。