シンガポールって、緑が多い。
これを言うのも、何回目でしょうか。
気候のおかげで、植物の生育が速いと言うのも有るとは思いますが、その裏には、シンガポール政府の強い意思があったのでした。
シンガポール緑化の歴史
初期:ガーデン・シティ(Garden City 緑の都市)
シンガポールの初代首相を務めたリー・クアンユーが、建国当初の1960年代から、国策として国の緑化を始めました。国民の豊かな生活や、外国からの投資家を呼び込むことなどが目的です。
植樹に加え、熱帯雨林で育つ植物の研究に始まり、ガーデンシティ(Garden City:緑の都市)を作るための施策を続けています。
中期:シティ・イン・ア・ガーデン(City in a Garden 緑に囲まれた都市)
2011年に建設されたガーデンズ・バイ・ザ・ベイがこのフェーズへの転換点と考えられているそうです。
前回の投稿 → シンガポールの緑化政策とガーデン・バイ・ザ・ベイ
緑を増やすことから、持続可能性にも目を向けた、一段階進んだステージです。
現在:シティ・イン・ネーチャ(City in Nature 自然の中の都市)
当初の単なる緑化から、自然との共存、都市と自然の一体化を目指し、2030年の姿を見据えて活動を続けています。
具体的な目標
国の緑化については、NParks(国立公園庁:National Parks Board)が中心となって進めています。
2019年、2020年の活動レポートの中に、2030年までの目標としてこんな事が挙げられていました。
- 人口1,000人辺り0.8ヘクタールの広さの公園を提供 (0.79ヘクタール/1,000人)
- 屋上緑地は200ヘクタール (120ヘクタール)
- 公園と公園をつなぐ遊歩道の総距離400Km (347Km)
- 多種の植物で構成された街路樹の総距離180Km(130K)
- 自宅から公園まで歩いて10分の環境90%(90%)
- 緑化取り組みコミュニティ数2,000(1,500)
*()内は2019年の状況です。
Nparks CSR関連レポート
私が街で実際に目にしたもの
私が街を歩いていて、気になったことなどを写真に撮っていましたが、政府の目指しているところを見て、
このために、行われているのか!
と、納得したのでした。
幾つかですが、実際の様子です。
人口1,000人辺り0.8ヘクタールの広さの公園を提供
1ヘクタールは、おおよそ25mプール36個分。
いまいちわかりづらいですが、かなりの広さではあります。
確かに、家の近所にも大きな公園があり、その規模はちょっとした植物園の様になっています。駐車場に遊歩道、レストランなどもあるんです。
屋上緑地は200ヘクタール
実際に、多くの建物で屋上や壁面に植栽が施されたビルを見かけます。
国から助成金が出るそうで、そういったサポートも建物の緑化に大いに役立っています。
建物の緑化は、ヒートアイランドの緩和や気温低下、大気の改善、さらに景観も良しで、メリットが多いのです。
<建物の上に植物>
<壁面に植物>
<歩道の屋根にも植物>
公園と公園をつなぐ遊歩道の総距離400Km
パークコネクタ(park connector)と呼ばれる、公園と公園をつなぐ歩道が整備されています。
これにより、シンガポール内の生態系の保全に役立つとともに、「自宅から公園まで歩いて10分の環境90%」も実現させます。
写真は、公園内の遊歩道なので、公園同士をつなぐ道ではありませんが、例えば、この様に整備されています。
フォトスポット、Henderson Waves
多種の植物で構成された街路樹の総距離180Km
高さの異なる様々な種類の植物を植えることで、より自然に近い街路樹を作り出しています。これは、人間にとっても、他の生き物にとっても有益です。
日本だと、街路樹は一種類の植物で構成されますが、シンガポールでは、複数種類の植物が植えられています。道路を歩くだけでも楽しめます。
背の低い植物に加え、日陰を作るための大きな木も、もちろん植えられています。
その背の高さは、日本と比べるとかなり高いので、手入れも出来ないよね・・と思っていましたが、実際にはやっています。
クレーン車を導入して。
しかも、一本の木から伐採される枝の量もすごい。
街路樹についても、NParksが管理しており、街路樹一本ごとに、木の特徴や伐採スケジュールなど管理していて、驚きです。
(シンガポールの木の管理)
コンドミニアムの植栽の手入れを見ていると、すごいなと思います。
水やりから伐採、殺虫剤まで頻繁に手入れをしています。しかも植えられている範囲もかなり広い。(それらの費用込みで、家賃が設定されているのでしょうけれども)
芝生に水を撒いていた人の、Tシャツに書かれていた文字は・・
「Plants make people happy」(植物は人を幸せにする)
結果がついてくる訳です。